私は今日も、コンビニのバイトに勤しんでいる。
とりあえず上京して、とりあえず何もせず、食っては寝食っては寝、
結果、あんなにあった(と思っていた)貯金は底を尽いてしまった。
金がないと今までのような食って寝るという普通の生活さえもできない。なので仕方なく、だ。
こんなことなら見栄を張って上京して独り暮らし!なんてせずに田舎の自宅警備員として勤しんだほうが幸せだったんじゃないか、と少し後悔。
「寒いなぁ…。」
この店には暖房がないのだろうか、というくらい寒い。まぁ何で寒いかというと、その通りなのだ。
今この店には暖房がない、半月くらい前に壊れたらしい。
とりあえず私が勤務し始めた時にはすでにこの状態だった、店長曰く「こういうコンビニエンスストアもあっていいんじゃないかな」だとさ、
どういうコンビニエンスストアだ。こんな客不孝な店があって良いのだろうか、私が思う限り確実に来客数は減っている。
そんな他愛ないことを考えてる間にいつのまにやら来店していた客がレジへやって来た。寒い中ご苦労さまです、ほんと。
客は左手に持っていた商品をカウンターに置き、右手で財布を取り出すという客として正しい行動をする。
さて私も店員として正しい行動を…
って、え? 目の前に置かれた商品は、アイスの代名詞とも言われるあの有名なガリ○リ君…。よくこんな寒いなかアイスを選ぶ勇気が湧いたな、パッケージに描かれている永遠の小学生は不気味な笑みを浮かべている。
…まぁ、ときどきいるんだよねこういう物好き。それともからかっているんだろうか。どちらにせよ、私は共感できないな。
とりあえずさっさと精算させてしまおう。
「63円になります。」
客が口を開いた。
「あっ…あの。」
「はい何か」
いかにも興味なさげに反応してみる、
「ぇ、えっと…。」
「……。」
とりあえず無言、全然興味なんてないんだからね!アピール、我慢だ我慢。スルースキルを最大限に発動する。すると客の口が開き次の言葉
「温めてください。」
「…は?」
今思えばこれが私と哉との出会いだった。
後悔は……している。
つづく